「非上場株式等の納税猶予」は、
「法人版事業承継税制」ともいわれています。
相続税の納税猶予」と「贈与税の納税猶予」がありますが、
ここでは、「非上場株式等についての相続税の納税猶予」について、簡単にご説明したいと思います。

概 要

「非上場株式等についての相続税の納税猶予」は、
非上場会社の株式を相続した後継者が、その会社を経営していく場合には、
その株式に係る相続税が、一定の要件のもと納税を猶予され、
後継者の死亡等により、
その納税が免除される制度です。

その会社の発行済株式の総数の3分の2を上限として、
その価額の80%相当額に対応する相続税の納税が猶予されます。

そして、その後継者である相続人が、納税猶予の対象になった株式を死亡時まで保有した場合などには、
猶予されている相続税の納税が免除されますが、
猶予されている期間にその株式を譲渡するなど一定の場合には、
猶予されている相続税の全部または一部について利子税と併せて納付しなければいけません。
株券のイラスト

平成20年10月1日以降の相続から始まった制度ですが、今は「一般措置」と「特例措置」の2つの制度があります。
「特例措置」は、平成30年1月1日から令和9年12月31日の10年間の期間限定措置です。
企業の事業承継を促すため、「特例措置」は「一般措置」に比べて、かなり要件が緩和され、利用しやすいものになっています。

特例措置とは?

 「特例措置」の適用を受けるためには、令和6年3月31日までに
「特例承継計画」(会社の経営を承継するための具体的な計画)を都道府県知事に提出して確認を受ける必要があります。

納税猶予の対象になるのは、発行済株式総数の3分の2までであり、納税猶予割合は80%ですが、
「特例措置」では、対象株式数の
上限(3分の2まで)を撤廃し、また、納税猶予割合も100%に拡大されています。

また、納税猶予適用後、5年間で平均8割以上の雇用を維持しないと納税猶予打ち切りとなって、猶予された相続税全額を利子税と併せて納付しなければなりませんが、
「特例措置」では、8割を下回っても、猶予の継続が可能になりました。

納税猶予を適用できる対象者は、1人の後継者に限られていますが、
「特例措置」では、
最大3人の後継者が適用可能です。

納税猶予の期間中に、もしも廃業や株式を売却した場合には、仮に経営悪化により株式の評価額がゼロになっていても、猶予されていた税額を納付しなければなりませんが、
「特例措置」では、
事業の継続が困難な一定の事由が生じたことで、株式の売却や解散があった場合には、
一定額が免除されます。
笑顔の男性

要 件

この制度の適用を受けるためには、
後継者である相続人等や先代経営者等である被相続人について、
代表権のことや保有株式数(議決権数)のことなど 多くの要件が定められています。

担保提供の要件もありますが、これは、この制度の適用を受ける非上場株式のすべてを担保として提供することでクリアできます。

ほかに重要な要件として、
期限内申告要件があります。
株式が未分割のままでは適用できませんから、遺産分割協議を確定させたうえで、
必ず申告期限までに必要書類を添付した相続税申告書を提出する必要があります。
期限後申告では適用できません。

まとめ

 「非上場株式等についての相続税の納税猶予」(法人版事業承継税制)について、簡単にご説明しました。

この制度は、かなりボリュームがある規定ですので、
簡単に説明するためには、相当大幅に内容を省略しておりますことをご了承ください。
事業承継

「特例措置」ができて、かなり使いやすい制度になったとはいえ、実際には、細かい適用要件がたくさんあります。

例えば、
・非上場の中小企業であるか
・後継者は代表権を有しているか
・被相続人は代表権を有していたことがあるか
・被相続人とその関係者で、50%超の議決権を持っていたか
・後継者とその関係者で、50%超の議決権を持つことになったか
・都道府県知事の円滑化法の認定を受けているか
などなど。(まだまだあります)

上記のたくさんの適用要件を満たして納税猶予を受けたとしても、一度要件を満たせば終わりではありません。
最初の5年間は、「継続届出書」の提出が毎年必要です。(5年経過後は3年ごとに提出)
提出を忘れると、猶予は打ち切りとなって、猶予額全額と利子税を支払うことになります。
ショックを受けた男性

最初の5年間に「納税猶予の適用を受けた株式を譲渡した」「後継者が代表者ではなくなった」などの事由が発生した場合にも、
猶予は打ち切りになって、
猶予額全額と利子税を支払わなければなりません。
5年経過後は、要件はゆるくなります。

納税猶予→免除 までたどり着ければ、メリットはとても大きいですが、
要件を満たし続けることができず猶予打ち切りとなれば、
猶予されていた税金に加えて利子税も支払わなければならないリスクがあります。

手続きも簡単ではありません。
重い税金のイラスト

制度を利用される際には、そういったデメリットもしっかりと把握したうえで、検討することが大切になってきます。

会社を経営されていると、
自分が持っているその会社の株式の評価額が上がることが、将来の相続税負担に直結します。

換金性のない「自社株」という財産を相続することが、
後継者の大きな負担になるというのは、事業承継における大きな問題点です。
辛そうに納税する男性

この記事では、かなり大雑把なご説明になりましたが、
「非上場会社の株式を相続した後継者が、その会社の経営を継続していくことで、
その株式に係る相続税が、一定の要件のもと納税を猶予され、
後継者の死亡等により、その猶予されている相続税が免除される制度がある。」
ということをご理解いただければと思います。

この制度についてもっと詳しくお知りになりたい方は、国税庁のHP「法人版事業承継税制」をご覧ください。

追記

※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。
わかりやすくするため詳細を省いていたり、改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、
ご注意ください。