遺産分割の方法

相続税の申告期限は、亡くなってから10ヶ月以内です。
10ヶ月以内に遺産分割協議が成立しない場合は、いったん未分割のまま申告することになります。

未分割の場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、
相続税額を少なくする特例が使えません。

「3年以内の分割見込書」を提出して、その後の遺産分割後に、その特例の適用を受ける手続きはありますが、
いったん未分割申告するときには、その特例が使えないので、
それに見合う納税資金を確保しなければなりません。

このため、相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立する ということは、
大事な相続税対策になります。

円満な相続

 

 

 

 

 

相続人が複数の場合、被相続人の財産債務をいったんすべての相続人が共有することになります。
その共有状態を解消して、各相続人に分配していく手続きが「遺産分割」です。
共同相続人間の「協議」によることが原則ですが、
遺言書で分割内容の指示がある場合は、それが優先されます。

主な遺産分割の方法としては、「現物分割」「代償分割」「換価分割」などがあります。
また、これらを組み合わせた分割方法も可能です。

現物分割

現物分割は、個々の財産を誰が相続するか個別に決定して、相続財産そのものを現物で分ける方法です。

例えば、自宅の土地建物は妻が、貸駐車場は長男が、株式は次男が というような分け方です。
一番シンプルな方法ですので、大部分の遺産分割はこの方法がとられています。

各相続人の取り分を調整する預貯金があればいいですが、不動産が相続財産の大部分を占める場合など、
公平に分けるのが困難なケースもあります。

空地のイラスト

代償分割

一つの土地が、相続財産の価額の大部分を占める場合など
現物分割で公平に分けるのは困難であることが少なくありません。

例えば相続人のうちの一人が相続財産の大部分を取得して、
その代わりに、その相続人から他の相続人に代償財産を支払う という分割方法があります。
代償分割といいます。

簡単にいえば、相続人はABの2人(2分の1ずつの法定相続分)で、相続財産は2億円の土地のみ
という場合に、相続人Aが2億円の土地を相続し、相続人Bに1億円支払う という方法です。

相続税の申告において、
Aの相続税の課税価格は、
相続した2億円-代償金1億円=1億円 となり
Bの相続税の課税価格は、
もらった代償金1億円 となります。

代償分割においての主な留意点2つ

チェックの文字

 

 

①代償金を支払う相続人の その支払能力について、検討が必要です。
一括払いが困難で、支払いが長期にわたる場合などはトラブルになることもあるようです。
(参考記事)相続対策!生命保険をどう活用するのか?「代償分割の財源として活用できる」

②代償財産として交付するのが現金であれば問題ありませんが、
代償財産として、相続人が所有していた土地を交付した という場合は、
その時の時価で譲渡したものとみなされて、所得税が課税されます。(譲渡所得)

例えば上記の相続人ABの例で、
相続人Aは、自分が持っていた1億円の土地をBに交付したとします。
相続人Aは、相続税の申告とは別に、1億円を譲渡収入とする所得税の申告が必要です。

譲渡収入になる という理屈がなかなか理解しにくいところかと思います。

クエスチョンマーク

 

 

 

 

相続人Aは、2億円の土地を相続して、相続人Bに対して1億円支払う という債務を負ったわけです。
Aが1億円の土地をBに交付することによって、その債務は消滅します。

土地を1億円で売却して現金1億円を手にすると同様に、
「1億円の債務の消滅」 という経済的利益を得た というように考えます。

Aにとってみれば、いったん1億円で売却して、その1億円(代償金)をBに交付したと同じ事 という方が
わかりやすいでしょうか。

換価分割

現物分割が難しかったり、相続人の全員が欲しくない相続財産があったり、
代償分割しようにも代償金が支払えない という場合などに、
相続財産を売却して換金し、その売却代金を相続人で分ける という分割方法があります。
換価分割といいます。

夫婦と¥マーク

 

 

 

 

相続税の申告においては、売却価額と相続税の課税価格とは関係ありません。

例えば、相続人ABの2人が、相続税評価額1億円の土地を換価分割して、
換価代金の分配割合(土地の共有割合)を2分の1ずつとした場合。
売却価額が1億2千万円になっても9千万円になっても相続税の課税価格は変わりません。
その土地についてのAの相続税の課税価格は、1億円×1/2=5000万円 となり、Bも同じです。

相続人ABは、相続税の申告とは別に、所得税の申告が必要です。
この場合の譲渡収入は、実際の売却価額です。
1億2千万円で売れたとすれば、Aは、譲渡収入1億2千万円×1/2=6000万円を譲渡収入として、
所得税(譲渡所得)の申告をすることになります。Bも同じです。

相続人ABが、相続税の申告期限(亡くなってから10ヶ月以内)から3年以内に売却した場合には、
譲渡所得の計算をするときに、その売却した土地につき負担した相続税分を控除することができます。
(措法39 相続税額の取得費加算の特例)

控除

まとめ

主な遺産分割方法について ご説明しました。

いずれの方法をとるにせよ、円満に遺産分割協議が成立することが一番です。
(協議が調わないときは、家庭裁判所に分割を請求することができます。)

遺産分割協議をいつまでに終わらせるという民法上の期限はありませんが、
だからといって、相続開始から何年も未分割のままというのは不安定で、
例えば土地の活用にも支障があります。

相続税の計算上
未分割申告だと適用できない特例がいくつかあり、
税務上のデメリットも小さくありません。

【未分割申告のデメリット↓↓】

  • 配偶者の税額軽減が適用できない。
  • 小規模宅地等の特例が適用できない。
  • 農地等の納税猶予が適用できない。
  • 非上場株式等の納税猶予が適用できない。
  • 物納することができない。
    物納とは、
    金銭で納税できない事由がある場合において、納税者が申請して、一定の相続財産を金銭に代えて納税することです。
    分割協議が確定していない相続財産は、物納が認められません。

重い税金のイラスト

 

 

 

 

民法上の期限はなくても、
実務上は、相続税の申告期限(亡くなってから10ヶ月以内)を目途に遺産分割協議を進め、
遺産分割を済ませて申告することが、大きな節税対策になります。

相続税の申告期限までに分割できなかった場合は、いったん未分割のまま申告期限までに申告します。
その後 遺産分割が確定したら、その分割内容に基づいて計算をし直し、
必要に応じて、修正申告や更正の請求の手続きをします。

上述した「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の特例」は、
申告期限から3年以内に分割できた場合には、適用が可能です。
未分割での期限内申告のときに、「3年以内の分割見込書」を提出しておくことが必要です。
3年以内に分割ができなかった場合でも、遺産分割の調停を申し立てているなどの やむを得ない事情があるときは、
承認申請書を提出して税務署長の承認を得て、3年という期限を延ばす手続きもあります。

追記

※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。
わかりやすくするため詳細を省いていたり、改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、
ご注意ください。