1.概 要
相続税の「小規模宅地等の特例」というのは、
被相続人等が事業用か居住用として利用していた宅地等を相続した場合には、
その宅地等の相続税の課税価格について、一定の限度面積まで80%または50%減額する という制度です。
自宅の敷地や、事業をしていた店舗や工場の敷地については、それを相続した配偶者や後継者の生活基盤の維持に欠かせない ということで、相続税が軽減されています。
宅地等は、建物や構築物の敷地として利用している必要があります。
構築物というのは、土地の上に定着した 建物以外の工作物で、例えば、塀・街路灯・ガードレール・舗装路面・庭園などをいいます。
土地の上に、建物や構築物が何もない宅地は、この特例の対象になりません。
被相続人等は
・被相続人(亡くなった本人)
・被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族
のことをいいます。
「被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族」というのは、 通常は、同居の親族のことです。
「同居」が絶対要件ではありませんが、別居していて「生計一」だというのには、
生活費の主要部分を共通にしていた という事実が必要ですから、
「別居」で「生計一」と判断されるケースは限られてくると思います。
課税価格の減額が80%か50%と大きくて、提出される相続税申告の中でも適用する頻度の高い重要な特例です。
税制改正があるたびに要件が複雑化して、適用にあたっては、判断に迷うことが多い特例でもあります。

相続税の申告期限(亡くなってから10ヶ月以内)までに遺産分割がされていない宅地等は、
この特例を適用することはできません。
ただし、ちゃんと手続きをすれば、3年以内に分割をして、適用を受けられます。
3年以内に分割できなかった時も
やむを得ない事情があると税務署長の承認を受けた場合には…という承認申請の手続きもあります。
小規模宅地等は4種類あります。
(特定事業用、特定同族会社事業用、特定居住用、貸付事業用)
それぞれ見ていきましょう。
2.特定事業用宅地等
1.要件
被相続人等の事業用(貸付事業を除きます)の店舗や事務所、工場などの敷地で、一定の要件に該当するものをいいます。

「被相続人等の事業用」ですから、「被相続人の事業用」の場合と、
「被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用」の場合(例えば被相続人と同居の息子の事業用)があります。
400㎡までの部分の相続税の課税価格が80%減額できます。
主な要件としては、「事業継続要件」と「保有継続要件」があります。
その内容は次のとおり。
【被相続人の事業用の場合の要件】
その宅地等を相続した親族が、申告期限までにその事業を引き継いで、申告期限までその事業を営んでいることと、
その宅地等を申告期限まで保有していること。
【被相続人の生計一親族の事業用の場合の要件】
その宅地等を相続した生計一親族が、相続開始直前から申告期限まで、その事業を営んでいることと、
その宅地等を申告期限まで保有していること。
2.令和元年度改正
令和元年度改正によって、
相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等は、この特例の対象外とされました。
駆け込み的な適用など、本来の趣旨(事業の継続への配慮)を逸脱した節税策に対応するための措置ですね。
ただし、3年以内であっても、一定の規模以上の事業の場合は、対象外にはなりません。
一定の規模以上とは
その事業用の償却資産の価額が、宅地等の評価額の15%以上の場合が該当します。
償却資産というのは、その宅地に建っている建物や、その事業用の機械や車両、備品などのことです。
3.特定同族会社事業用宅地等
被相続人やその親族等が、株式の50%超を持っている法人の事業用(貸付事業を除きます)の店舗や事務所、工場などの敷地で、一定の要件に該当するものをいいます。

400㎡までの部分の相続税の課税価格が80%減額できます。
主な要件としては、「法人役員要件」と「保有継続要件」があります。
その内容は次のとおり。
その宅地等を相続した親族が、申告期限にその法人の役員であることと、
その宅地等を申告期限まで保有していること。
4.特定居住用宅地等
1.要件
被相続人等の居住用の自宅の敷地で、一定の要件に該当するものをいいます。

「被相続人等の居住用」ですから、「被相続人の居住用」の場合と、
「被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住用」の場合があります。
330㎡までの部分の相続税の課税価格が80%減額できます。
その宅地等を相続した親族によって、主な要件が変わって来ます。
2.「被相続人の居住用」の場合の要件
①相続したのが配偶者の場合、取得者ごとの要件はありません。
②相続したのが同居していた親族の場合、「居住継続要件」と「保有継続要件」があります。
その内容は次のとおり。
その宅地等を相続した同居親族が、相続開始直前から申告期限まで引き続き その家屋に居住していることと、
その宅地等を申告期限まで保有していること。
③相続したのが①②以外の親族の場合の要件は次のとおり。
・居住制限納税義務者か非居住制限納税義務者のうち、日本国籍を有しない者ではないこと。
(参考)居住制限納税義務者、非居住制限納税義務者については、国税庁HP「相続人が外国に居住しているとき」を参照
・被相続人に配偶者がいないこと。
・相続開始直前に被相続人と同居していた法定相続人がいないこと。
・相続開始前3年以内に、その相続した本人またはその本人の親族等が所有する家屋に居住したことがないこと。
ただし、相続開始直前に、被相続人が居住していた家屋を除きます。
・相続開始時にその相続した本人が居住している家屋を 相続開始前のいずれの時も所有したことがないこと。
・その宅地等を申告期限まで保有していること。
3.「被相続人の生計一親族の居住用」の場合の要件
①相続したのが配偶者の場合、取得者ごとの要件はありません。
②相続したのが生計一親族の場合、「居住継続要件」と「保有継続要件」があります。
その内容は次のとおり。
その宅地等を相続した生計一親族が、相続開始前から申告期限まで引き続き その家屋に居住していることと、
その宅地等を申告期限まで保有していること。
5.貸付事業用宅地等
1.要件
被相続人等の貸付事業用の賃貸建物や駐車場設備などの敷地で、一定の要件に該当するものをいいます。

「被相続人等の貸付事業用」ですから、「被相続人の貸付事業用」の場合と、
「被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業用」の場合があります。
200㎡までの部分の相続税の課税価格が50%減額できます。
主な要件としては、「事業継続要件」と「保有継続要件」があります。
その内容は次のとおり。
【被相続人の貸付事業用の場合の要件】
その宅地等を相続した親族が、申告期限までにその貸付事業を引き継いで、申告期限までその貸付事業を営んでいることと、
その宅地等を申告期限まで保有していること。
【被相続人の生計一親族の貸付事業用の場合の要件】
その宅地等を相続した生計一親族が、相続開始前から申告期限まで、その貸付事業を行っていることと、
その宅地等を申告期限まで保有していること。
2.平成30年度改正
平成30年度改正によって、
相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、この特例の対象外とされました。
ただし、3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等であっても、
相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業をしていた被相続人等の その貸付事業の用に供されたものであれば、対象外にはなりません。
6.まとめ
小規模宅地等の特例について、ご説明しました。
相続税の計算の際に、
被相続人等の事業用や居住用の宅地等について、おおむね以下のように課税価格を減額する特例です。
居住用宅地 330㎡まで80%減額
事業用宅地 400㎡まで80%減額
貸付用宅地 200㎡まで50%減額
この特例の対象地が複数ある場合の限度面積は、
【貸付用がない場合】
居住用と事業用の完全併用が可能で、最大730㎡(居住用330㎡+事業用400㎡)が限度。
【貸付用がある場合】
調整計算した面積↓↓が、全部で200㎡以下となるような限度面積要件あり。
事業用宅地の面積×200㎡/400㎡ + 居住用宅地の面積×200㎡/330㎡ + 貸付用宅地の面積 ≦ 200㎡

相続が起きる前の、この特例を生かすための生前対策も大事ですし、
相続が起きてから、誰が、どの宅地等で適用するかという選択も大事です。
効果の大きい特例ですから、この特例を上手に活かせるようにしましょう。
7.追記
※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。
わかりやすくするため詳細を省いていたり、改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、
ご注意ください。
