2025年3月2日更新しました!

贈与税の配偶者控除

贈与税というのは110万円以内だと税金がかからない というのはご存じの方も多いと思います。

贈与税は、贈与を受けた金額から110万円の基礎控除を引いた金額に税率を乗じて計算しますから、
110万円以内だと贈与税はかかりません。

「贈与税の配偶者控除」は、この110万円のほかに最高2000万円まで つまり
2110万円まで控除できる制度です。

要件は以下のとおり

  1. 婚姻期間が20年以上の夫婦の間での贈与であること
  2. 贈与するものが居住用不動産 居住用不動産を取得するための金銭であること
  3. 贈与を受けた配偶者が、翌年3月15日までに現実に住んでいること
  4. この特例を受けるという贈与税申告書を税務署に提出すること

「居住用不動産」などと普段は言いませんが、要するに「自宅」のことです。

結婚して20年以上の相手に自宅を贈与する場合、2110万円を控除して贈与税を計算できるということです。

2110万円以下だったら贈与税はかかりません。

評価額が2110万円を超えるので贈与税がかかるという場合、
自宅の2分の1とか3分の1とかの共有持分の贈与にして2110万円を超えないようにする
というのもOKです。

ただ上記の要件4.で述べたように、贈与税がかからない場合でも申告は必要です。

注意点

注意その1

2110万円まで贈与税かかりません となると、お得な制度のように聞こえますが、
そうとは限らないので注意が必要です。

自宅の土地や家屋を贈与すると、贈与税以外にも登録免許税や不動産取得税がかかってきます。

税

名義変更の手続きを司法書士に依頼すればその報酬も必要です。

贈与税申告書を税理士に依頼すればその報酬も必要です。

例えば、2000万円の自宅の土地を贈与した場合の登録免許税は、
2000万円×2%=40万円
不動産取得税は、
2000万円×1/2×3%=30万円です。

たとえ「贈与税の配偶者控除」により贈与税がかからなくても、
40万円+30万円+司法書士や税理士の報酬
という ざっと100万円くらいの費用がかかってきます。

びっくりしたおじさん

生前に自宅を贈与するのではなく、将来相続が発生したときに、配偶者が自宅を相続する場合はどうでしょう。

配偶者が相続する財産は、最低でも1億6000万円までは相続税がかかりません。

2000万円の自宅の土地を相続した場合の登録免許税は、2000万円×0.4%=8万円
不動産取得税は相続の場合 非課税です。
贈与の時は登録免許税と不動産取得税で70万円でしたよね。

それに相続の時は、最低でも1億6000万円までは配偶者に相続税がかからない!

つまり、2110万円まで非課税だといって、無理に生前贈与する必要はまったくないわけです。

贈与をした方がいいケースも中にはあるでしょう。
「贈与税の配偶者控除」を使って贈与した方がいいのは、どんな場合か「注意その2」でご説明したいと思います。

注意その2

「贈与税の配偶者控除」を使って、生前に自宅の贈与を実行された方がいいですよ というケースの具体例

ケース1
このままだと相続税申告が必要だが、財産を2000万円減らせば相続税申告が不要になるという場合。

例えば、相続人が妻と子の2人である場合、基礎控除は4200万円です。

自分の財産を試算してみると5000万円くらいあって、このままだと基礎控除を超えるので、相続税申告が必要です。
2000万円の自宅を配偶者に生前贈与すれば、自分の財産は3000万円になり、基礎控除4200万円より大幅に下がって相続税申告は不要になる可能性大です。
というのであれば、「贈与税の配偶者控除」を使って自宅を配偶者に生前贈与するのは、良い方法かと思います。

自宅を贈与すれば、注意その1で述べたように諸費用(登録免許税他)はかかりますし、
「贈与税の配偶者控除」を適用する贈与税申告書の提出が必要になります。

ですが、贈与しないままだと、基礎控除を超えているので相続税申告が必要になり、
相続税申告を税理士に依頼した場合の費用や手間もかかります。
(申告書作成を税理士に依頼したとしても、税理士に資料を提出したり問い合わせに応じたり、ある程度の手間はかかります。)
自宅を贈与した場合の贈与税申告に比べて、はるかに複雑で手間のかかる作業になります。

相続税申告書3

ですので、相続税申告が不要になる というのは大きなメリットかと思います。

このままだと相続税申告は必要だが、配偶者に自宅を贈与すれば、相続税申告は不要になる という方にとっては、この特例を使っての贈与は検討の価値ありかと思います。

相続税の計算では、7年内の贈与加算という制度がありまして、亡くなった日からさかのぼって7年以内の贈与は、相続税の課税価格に加算するというルールがあります。

「贈与税の配偶者控除」での贈与財産は、
7年以内でも加算しなくてよいことになっています。
なので、相続が近くなってからの生前贈与でも間に合いますよ。

 

ケース2
遺された配偶者の生活の本拠の確保として、生前に自宅を贈与しておく方が安心という場合。

夫婦2人暮らしで夫が亡くなり、相続人は、妻と子ども1人の計2人 子は結婚して別に住んでいるというケースで、
例えば相続財産が、自宅の土地建物3000万円と預貯金500万円の合計3500万円という場合。

すべて母親にいったん相続してもらい、将来母親が亡くなれば、残りの財産を子どもが相続する
というふうに、すんなり まとまればいいですが、そうはいかない場合もあります。

もし子どもが、法定相続分をもらいたいと主張した場合。
子の相続分は、3500万円×1/2=1750万円ですが、預貯金は500万円しかありません。
自宅の土地建物を売却して現金に換えるとなると、母親の今後の生活への影響は甚大です。

母娘のけんか

親と子の関係はいろいろですから、たとえ母と子でも遺産分割でもめないとも限りません。
そういう可能性がある場合、つまり自分が亡くなった後、配偶者の生活の本拠が危ぶまれるようなことが想定される場合には、この「贈与税の配偶者控除」を利用して、生前に配偶者に自宅を贈与しておく
というのは、とてもいい方法だと思います。

幸いにも、上記のことを後押しする民法(相続法)の改正がありました。
2019年7月1日から施行されている制度で、
婚姻期間が20年以上の夫婦間で行った自宅の贈与については、
被相続人が贈与をした趣旨に沿った遺産分割を可能とするための法改正です。

【参考:法務省HP/民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の概要/2 遺産分割に関する見直し等(1)配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)】

まとめ

「贈与税の配偶者控除」とは、婚姻期間20年以上の夫婦の間での自宅の贈与については、
基礎控除110万円のほかに2000万円控除できる つまり2110万円まで贈与税がかからないという制度です。

「贈与税の配偶者控除」を使ってわざわざ自宅を贈与するのは、たいていの場合 お勧めしません。
相続のときまで待てば、配偶者だと最低でも1億6000万円までは相続税はかからないですし、
名義を変更する諸費用(登録免許税など)は、相続より贈与の方がかなり高くつくからです

けれども中には、「贈与税の配偶者控除」を使った方がよいと判断できるケースもあります。

一つは、相続税の申告が必要かそうでないか、自宅の生前贈与をするかしないかで変わってくるケース。
このままだと相続税申告必要、財産を2000万円くらい減らせば申告不要 というラインにおられる場合は、
配偶者に自宅を贈与して、相続税申告を回避することを検討して頂くといいと思います。

もう一つは、相続発生後の遺産分割で、万が一にも相続争いが起きて、配偶者の生活の本拠の確保に不安があるケース。
こういう場合は、自分が亡くなった後の、配偶者の生活保障のため自宅を生前に贈与して
「贈与税の配偶者控除」を適用するのは、いい方法だと思います。

追記

※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。
わかりやすくするため詳細を省いていたり、改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、
ご注意ください。